横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

素晴らしきかな、人生

「素晴らしきかな、人生」Collateral Beauty

監督:デヴィッド・フランケル
出演:ウィル・スミス、エドワード・ノートンケイト・ウィンスレット


 この邦題、ジェームズ・スチュアート主演、フランク・キャプラ監督の名作「素晴らしき哉!人生」とまぎらわしいが、そちらは「It's a Wonderful Life」という原題。リメイクではなく、まったく別のストーリー。

 本作は主役クラスの俳優が何人も参加していて、とても豪華! 

<あらすじ>
ハワードは友人と共同で会社を経営している。順風満帆だったが、ある日、6歳の娘を亡くして以来、立ち直れなくなった。会社の経営にも影響が出ていた。会社を売却する瀬戸際まで追い詰められ、ホイットやクレア、サイモンは一計を講じる。

【ネタバレ】

 


 舞台俳優たちと知り合ったホイットは、彼らにハワードの前で”お芝居”を演じさせる。それぞれ「死」「時」「愛」に扮してハワードの前に現れ、さらにその様子を私立探偵に撮影させるためだ。なぜ「死」「時」「愛」なのかというと、ハワード自身の書いた手紙の宛先がこの3つの抽象概念だったから。

 当初はハワードに経営者としての判断能力がないことを、取締役会で証明することが目的だったのに、俳優たちとの関わりは、いつしかホイット達3人にも影響を及ぼしていく。3人は3人でそれぞれ悩みを抱えており、彼らの悩みと俳優の役回りが奇妙な一致を見せる。

 たとえば、病気を隠していたサイモンは、「死」に扮した老女優ブリジットに諭され、妻に打ち明ける。シングルで、精子バンクを利用した出産を考えていたクレアは、「時」に扮したラフィーに「産まなくとも、いい母親になれるよ」と励まされる。自身の不倫が原因で離婚したホイットは、「愛」役のエイミーから、妻と暮らしていてめったに会えない娘のことを尋ねられる、という具合に。

 一方、ハワードは、子供を亡くした親たちが集まるサークルに参加し、主催者のマデリンと少しずつ親しくなる。彼女も6歳の娘を亡くしていた。また、子供の死がきっかけで配偶者と離婚していたりと、ハワードと共通点があった。

 マデリンは娘が亡くなる直前、病院で不思議な老女に出会った。老女から「見逃さないで、幸せのオマケを」と言われたという。そのエピソードを聞いたハワードは、憤慨して離れていく。

 やがてハワードは会社を去ることになるが、最後にホイット達に言葉をかける。ハワードもまた、3人の悩みに気づいていたのだ。もし、ハワードが廃人状態にならなかったなら、彼自ら3人に声をかけ、もっと早い段階で励ましてやれたかもしれない。

 マデリンの正体というか、ハワードとの意外なつながりが明らかになる過程は、上質のミステリのよう。

 2年前、舞台俳優たちに出会っていなかったはずのマデリンが、病院で出くわした老女がブリジットに、つまり「死」にそっくりだったというのは――マデリンは本当に「死」の精を見たのかもしれない。


 原題の「Collateral Beauty」は、映画の中では「幸せのオマケ」と訳されていた。悲しい出来事の後に起こる幸せを見逃すな、というような意味。邦題は、もしかしたら「幸せのオマケ」でも良かったような気もする。なんで他の作品と間違えそうな題名になったんだろ。インパクトが弱いから?

 気になって調べたら、脚本家が本家の「素晴らしき哉!人生」にインスパイアされたという。

www.christianexaminer.com

 それでクリスマスシーズンという設定になったのか! 終わりの方でハワードがマデリンの家に会いに行く場面は、周囲の家々のイルミネーションがまばゆく、雪が積もり、聖夜の静けさが引き立っていた。

 本作を現代版「素晴らしき哉!人生」だと解釈すれば、ジェームズ・スチュアート演じる主人公の出会った2級天使クラレンスは、本作では「死」「時」「愛」の精に変貌したということか。

 

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