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横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

アスファルト

アスファルト」Asphalte

監督:サミュエル・ベンシェトリ
出演:イザベル・ユペールヴァレリア・ブルーニ・テデスキ


<あらすじ>
フランス郊外のとある寂れた団地に集まった、サエない中年男、夜勤の看護師、母親が留守がちな鍵っ子のティーンエイジャー、落ちぶれた女優、不時着したNASAの宇宙飛行士、服役中の息子を持つアルジェリア系移民の女性。たまたま団地に集った孤独を抱えた6人の男女に、3つの予期せぬ出会いが訪れる。


 久しぶりにギンレイホールへ行く。2本とも見逃していたフランス映画で、これまた久しぶりに2本立てで鑑賞する。このところ目が疲れるので、1度に1本鑑賞するのがほとんど。

 お目当ては同時上映の「めぐりあう日」で、あまり予習せずに「アスファルト」を見たら、大当たりだった。イザベル・ユペールが女優の役、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキが看護師の役を演じている。

 

【ちょびっとネタバレ】

 


 孤独な高校生の少年と同じ階に、謎めいた中年女性が引っ越してくる。ひょんなことから言葉を交わすうちに、彼女が女優だと判明する。昔の主演映画を鑑賞した後、少年は彼女の若い頃の写真を見つけ、ひょいと失敬する。舞台のオーディションに行く代わりに「動画を撮って演出家に送ろう」ということになり、少年は撮影に協力する。

 この2人、不思議な年の差カップルのような、親子のような、なんともいえない雰囲気を醸し出している。イザベル・ユペールって昔とあまり変わってないな~と思ったら、還暦を過ぎているとは! 全然見えないよ。少年役のジュール・ベンシェトリ(監督の息子)は、母親がマリー・トランティニヤン、祖父がジャン=ルイ・トランティニヤンだとか。

 団地の2階に住む中年男とエレベーターの話は、フランスの映画館なら、ブラックユーモアが好きな国だから、きっと笑いが起きただろう。日本の観客は真面目なので……。白衣の上にカーディガンを羽織ったヴァレリア・ブルーニ・テデスキは、「あ~、こういう看護師さん、実在しそう」という感じ。それにしても、写真家のふりをするこの男性の本当の職業は何だろう。

 不時着したNASAの宇宙飛行士ジョンの話は、フランス人の米国人に対する思惑が透けて見えるような。映画の前半で、ハミダ夫人が刑務所に面会に行き、後半で、夫人の息子が不在なこと、背格好がジョンと同じくらいなことが徐々に分かってくる。

 刑務所にいる実の息子よりも、言葉の通じない異国の青年の方が、配水管を直してくれたり、”孝行息子”ぶりを発揮する。ハミダ夫人にとっては、ありえたかもしれない、”真面目な息子”との暮らしの疑似体験になったわけだ。それどころか、宇宙飛行士って優秀じゃないとなれないから、”エリート息子”だ。

 ところで以前、日本人宇宙飛行士のインタビューを見たのだが、宇宙から地球に帰還した宇宙飛行士は、無重力空間での暮らしで筋力が衰えているから、すぐには地上で自力歩行ができないらしい。ジョンてば、団地に不時着した直後に思い切り走り出していたぞ。いいのか? 

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