横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

NHKヒストリア ジュール・ヴェルヌ「八十日間世界一周」

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 たまたまテレビをつけたら、ジュール・ヴェルヌの「八十日間世界一周」というタイトルが飛び込んできた。なになに。19世紀後半に、実際に新聞記者がヴェルヌの小説のルートをたどって競争したとな?

今回のヒストリビア:「世界一周なおなお書き(前編) 一周ぐるりアレやコレや」 | 歴史秘話ヒストリア | NHK大阪放送局ブログ

 
 時は1889年。
 競争したのは、いずれも若い女性記者。そのうちの一人ネリー・ブライのかぶっていた帽子が、”ディアストーカー”ではなく”シャーロック・ホームズの帽子”と呼ばれ。また、ニューヨークから東に向かった彼女が英国に到着すると、「シャーロック・ホームズの活躍していた時代」とナレーションが入ったり。NHKってば、ホームズ推し。

 

 フランスの作家ジュール・ヴェルヌ(1828~1905年)が「八十日間世界一周」を発表したのが1873年。その16年後に、この競争が実施された。ネリー・ブライは英国に到着したところで、ジュール・ヴェルヌから招待をうけ、フランス北部アミアンの自宅まで会いに行く。あら素敵。

 西回りのエリザベス・ビズランドは、最初に到着した外国が日本。江戸情緒の残る、明治初期の日本文化にすっかり心を奪われる。明治の外国人女性旅行者という点で、なんだかイザベラ・バードを思い出してしまった。

 外国を訪れることが珍しかった時代に、新聞(仕事)のためとはいえ、海外旅行経験のなかった若い女性二人が、壮大な旅に出るというのがすごい。外国の文化にふれたことは一生の宝物になり、レースが終わった数年後にも、エリザベスがもう一度日本を訪れたというのが印象深い。

 女性記者役の女優、サラ・マクドナルドさんとハンナ・グレースさんて、もしかして、朝ドラ「花子とアン」に出ていなかったっけ? 女学校の先生役で。どこかで見たなーと。

 そうそう。
 ジュール・ヴェルヌ作品と、シャーロック・ホームズ物語をからめたパスティーシュは、いくつか発表されている。たとえば、ルネ・レウヴァンの短編「疲れた船長の事件」(ミステリマガジン2006年11月号)もその一つで、ホームズと、ジュール・ヴェルヌ作品のある人物が競演している。

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 それと、昔洋書で読んだきりでうろ覚えなんだけど(今でも未訳だと思う)、フィリップ・ホセ・ファーマーの「The Other Log of Phileas Fogg」だったかな。「八十日間世界一周」のフォッグ氏が主人公なのだが、作中にマイクロフト・ホームズの名前が出てきたのだ。クラブつながりだったかな? 今、実物が手元にないので確認できないけど。

八十日間世界一周 (創元SF文庫)

八十日間世界一周 (創元SF文庫)

 

 

ヴェルヌの『八十日間世界一周』に挑む―4万5千キロを競ったふたりの女性記者

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