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横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

最高の花婿

映画

「最高の花婿」Qu'est-ce qu'on a fait au Bon Dieu?
2014年 フランス映画
監督:フィリップ・ドゥ・ショーブロン
出演:クリスチャン・クラビエ、シャンタル・ロビー

 以前、フランス映画祭で「ヴェルヌイユ家の結婚狂騒曲」の題名で上映されたのだが、帰りが終電になっちゃうので断念(もう、体力的に午前様はできん……)。丁度、ギンレイホールで上映中なので、見に行ってきた。

 ロワール地方のシノンに住むヴェルヌイユ夫妻には、4人の娘がいた。先に結婚した長女~三女の夫はそれぞれユダヤ人、アラブ人、中国人と、外国人ばかり。せめて四女にはカトリック教徒(というかズバリ、白人のフランス人)と結婚して欲しかった。ある日、四女が連れてきたのはカトリック教徒だったけれど、アフリカの男性で……。

 


 ヴェルヌイユ夫妻の設定が秀逸。敬虔なカトリック教徒というだけでなく、なんとロワール地方。それもシノン城のお膝元に住んでいるではないか。日本でいうと、江戸時代の情緒が残る、外国人なんてまず見かけない、保守的な地方の城下町だろうか。古い城館を思わせる家に住んでいて、裕福なブルジョワなのが明らかにされている。

 対して、今のパリなんて、「ここ、どこの国?」と思うぐらい多国籍で、肌の色や宗教が様々な人たちが闊歩している。「人種のるつぼ」と呼ばれるニューヨークみたいな状態。異文化カップルなんて、少しも珍しくない。

 四姉妹の父親も母親も、娘たちの婿選びにはがっかりしていて、それだけでも辛いのに、家族で食卓を囲もうものなら、四つの異なる文化(フランス+婿たち)が衝突する。陰で呼んでいるあだ名も、ユダヤ人は「シャイロック」、中国人なら「ブルース・リー」とか……。これが日本人だったら、いったい何て呼ばれたことか(「カメラ」とか?)。

 三女の婿(中国人)の扱われ方に「あー、あるある。アジア人て、こんなこと言われる。こんな態度とられる」と思ってしまった。

 クリスマスにはヴェルヌイユ家に集まり、伝統的なフランスらしい夜を過ごす。婿たちの宗教や文化に合わせ、母が三種類の七面鳥料理を用意したり、一見和やかな雰囲気。しかし、義父に「国家は歌えるか?」と聞かれて、婿たちが「ラ・マルセイエーズ」を歌ってみせるところなんて、サッカー・フランス代表をめぐる政治家ル・ペン(娘の方じゃなく、先代の親父の方)への当てこすりじゃん! これ、フランスの映画館で見たら、絶対場内が大爆笑だったと思う。

 ヴェルヌイユ夫妻は「フランスらしさ」にこだわるけれど、母が告解に行く教会の神父なんて、なまぐさ坊主ならぬ、なまぐさ神父だし、精神科医はちっとも医者らしいことをしない。四女の相手にと思って招待した、近所のフランス人の若い男は、何だかぱっとしない。「フランスらしい」ものや人って、そんなに素晴らしいものなのか? という皮肉が効いている。

 さて、四女の婚約者の方も、父親が超頑固で、「フランス人と結婚するなんざ、けしからん!」。フランスに到着した時も、あてつけで、めったに着ない民族衣装で現れる。これまでと比べて、一番手ごわそう。

 色々あって二人の父親は、一緒にレストランで食事し、鯨飲するのだが、酔っぱらって店を出る頃には、服をとっかえていた。というか、おっさんたち、どこで着替えたの???

 その後、留置場にいるのがわかって、婿たちが迎えに行くのだが、その外見から、受付の警官には「あんたたちがヴェルヌイユ家の婿だって!?」と、まったく信じてもらえず、追い返されてしまう(たぶん、この場面も、フランスだったら大爆笑と思われ。画的に可笑しすぎる)。

 映画なので、最後にはうまく落ち着くところに落ち着くのだが、現実はこうは行かないよな。

 日本人とフランス人の国際カップルを何組か知っているけど、日本人(嫁の側が多い)がフランス人(旦那の側が多い)の実家に行ったら、そしてそれが保守的な田舎だったら、どんな目に遭うか、容易に想像がついてしまう。近所はともかく、家族が異文化に寛容なら良いんだけどね……。

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