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横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

イングリッド・バーグマン 愛に生きた女優

イングリッド・バーグマン~愛に生きた女優~」
監督:スティーグ・ビョークマン
ナレーション:アリシア・ヴィキャンデル

 往年の大女優イングリッド・バーグマンの伝記映画。
 1915年生まれなので、トーベ・ヤンソンと同じく、第一次大戦の頃に生まれたわけだ。この映画は、2015年の生誕100周年を記念し、娘で女優のイザベラ・ロッセリーニがスティーグ・ビョークマン監督に制作を依頼したことから実現したとのこと。

 家庭人としてのバーグマンの姿が、4人の子供たちのインタビューと、ホームビデオの映像、日記や書簡を通して描かれる。離婚・再婚に伴い、子供たちの生活が大きく変わったうえに、パパラッチの容赦のなさに驚いた。有名人の子供とはいえ、一般人なのに、プライバシーの概念はないのか?

 昔はカメラとフィルムはとても高価なものだったと思う。家庭内はもちろん、映画の撮影現場にもバーグマンは自前のカメラを持ち込み、休憩中の俳優仲間やスタッフを撮っている。撮られるだけでなく、撮る方も好きだったようだ。

 


 バーグマンといえば、出演作の中では「カサブランカ」のヒロイン・イルザ役が有名だろうか。母国語以外にも数か国語を操り、色々な国で映画に出演していた。ルノワール監督の映画にも出ていたとは知らなかった。しかもフランス語で演じていた。

 この映画を見るまで忘れていたが、バーグマンは「さよならをもう一度」にも出演していた。フランソワーズ・サガンの「ブラームスはお好き」を映画化したもので、舞台はパリなのに、主な出演者はイブ・モンタン以外にフランス人がいない。以前見た時は台詞が全部英語なので、いたくがっかりした記憶がある。主人公ポールの名前を女性と分かるようにポーラと変え、年下の恋人シモンの名前はなぜかフィリップに変えられた。

 不満はあるけれど、撮影した時代の俳優の中では、ベストなキャスティングだったということか。フィリップ役のアンソニー・パーキンスはカンヌで賞を獲った。バーグマンも、40代とは思えない美しさだし、イブ・モンタンもプレイボーイ役にぴったりだった。バーグマンがフランス語を話せたのなら、フランス語で撮影しても良かったのにと思ってしまった(パリジェンヌを演じるのは難があったかもしれないが)。

 子供たちのうち、イザベラ・ロッセリーニは後に女優になるのだが、少女の頃から美人だった。母の美貌を受け継いだらしい。

 バーグマンがアカデミー賞を受賞していたのは知らなかった。スウェーデンのような小さな国では、相当な快挙なのではなかろうか? ナレーションを担当したのはアリシア・ヴィキャンデルで、くしくも今年、彼女もアカデミー賞を受賞している。

 非英語圏の国でオスカーを獲るのは並大抵ではなくて、昔自分がフランスにいた頃、ジュリエット・ビノシュが受賞した時は、「シモーヌ・シニョレに次いで二人目」という快挙で、祭り状態だった。きっと、スウェーデンも今年は祭り状態だったと思われる。

 映画の中では短かったけど、写真家ロバート・キャパとの恋愛のエピソードも出て来る。当時のバーグマンの「ノーメイクでも輝くような美しさ」の裏にはキャパの存在があったわけで、この恋があったから、最初の夫との離婚を考えるきっかけになったんだろう。

 三番目の夫がスウェーデン人で、島と別荘を所有しているということで、北欧の海が映された。あれ、トーベ・ヤンソンの本で見たような光景だ。フィンランド人といい、スウェーデン人といい、北欧のある程度裕福な人たちは、島と別荘を所有するのが当たり前らしい。

 ハリウッドの大女優の伝記映画といえば、マレーネ・ディートリッヒの伝記映画と、半ばフィクションが入っているが、グレース・ケリーモナコに嫁いだ後を描いた「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」が面白かったっけ。あの頃、女優は輝いていて、オーラをまとっていた。今は……SNSの功罪か、女優も男優も、スターの輝きを失っているように感じる。

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