「ルーフォック・オルメスの冒険」
カミ作 高野優訳 創元推理文庫
待望の新訳!
「機械探偵クリク・ロボット」の方が先に翻訳出版されたけど、待った甲斐があった。
実は、原書は前から持っていて、たまにパラパラめくっては「イラストかわいい~」と楽しんでいたのだ。若い頃は洋書を手にして「翻訳が出てない? だったら自分で訳しちゃえ」などと言っていたけど、それでもこの本だけは早々に「無理! 誰か訳して!」と他力本願。
なぜなら、怒涛の言葉遊びがあるから! ダジャレをうまいこと言えばいいなんてもんじゃない。読者をクスリとさせる、ユーモアのセンスがないと。
主人公ルーフォック・オルメスの迷探偵ぶりに「んな、アホな!」とツッコミつつ、ページをめくる手が止まらない。ふと「原書だと何と書いてあるんだ?」と思った箇所もある。
たとえば、「聖ニャンコラン通り」は仏語だと「La Rue Saint Couic」。Couicはネズミの鳴き声なので、直訳すると「聖チューチュー通り」だろうか。猫にひっかけたニャンコランて可愛い(なぜかバンコランを思い出しちゃったよ……ジョン・ディクスン・カーの方じゃない。「パタリロ!」の方だ)。
ちなみに「競馬場の怪」に出てくる馬の名前は、「イワシノムスコ」とか、原文もそのままである。
東京創元社には、出してくれて感謝しきりなんだが、一つだけ難が。それは、原書のお茶目なイラストがまったく入っていないこと! まあ、このイラストを全部入れたら、本の価格が高くなってしまうからのう。ちなみに、原書表紙の怪人スペクトラ(右上の人物)が足にくくりつけているのは、2匹の……ネタバレになるから、詳しくは「チェッカーの殺人」を読んでね。