横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

「みんなの少年探偵団」「みんなの怪盗ルパン」

 ポプラ社から出ている、往年の少年少女向けミステリのパロディ集。活躍中の現代の作家たちが筆をふるう。

 短編集「みんなの少年探偵団」は2巻まで出ていて、ほかには長編の「全員少年探偵団」なども出ている。長編は未読なので、今後の楽しみにしよう。

 1巻と2巻を通して、女性作家の書いた短編が好きかも。湊かなえの「少女探偵団」は、祖母が語る、小林少年との冒険の思い出。大崎梢の「闇からの予告状」は、現代の中学生と祖父母のお宝にまつわる事件。いずれも、少女が主人公なのだ。本家は少年探偵団だから、あまり女子にスポットが当たっていなかったしね。

 1巻を読んだのはだいぶ前だけど、全体を通して「がんばれ、怪人二十面相!」と思った記憶がある。そう、毎回衣装やトリックを考える方は大変なのだ……。

 



 日本が舞台ということで、どの作家さんもいかにしてあの時代と現代を結びつけるかに、工夫をこらしている。

「みんなの怪盗ルパン」は、ポプラ社というだけあって、南洋一郎の翻案の雰囲気を残そうと努めている。のっけから一作目、小林泰三の「最初の角逐」はホームズのパロディでもある。これはホームズの「最後の事件」と「空き家の冒険」を読んでいないと、理解できないかも。

 でもね。周りのミステリ愛好家は、だいたい小学校の図書室で、ポプラ社のホームズ、ルパン、少年探偵団の3セットに出会っているんだよ。ルパンだけ読んでいてホームズ読んでいないなんて人、お目にかかったことないぞ。「皆、読んでるだろ?」という前提で書かれている。

 湊かなえの「仏蘭西紳士」は舞台を日本に移したもの。日本人少女の目の前に、レニーヌ公爵なる紳士が現れて、彼女の家族をめぐる事件をバッサバッサ解決してくれる。少女はキラキラした目で紳士を見つめる。これ、女子ミスに認定しましょう!

 さて、この流れで「みんなの名探偵ホームズ」的なものを作ったら、やはり山中峯太郎の文体になってしまうんだろーか? 必ずしもシャーロキアンではない、現代のミステリ作家さんが書いたら、どんな作品になるのか。読んでみたい気もする。

 

みんなの少年探偵団 (一般書)

みんなの少年探偵団 (一般書)

 

 

 

みんなの怪盗ルパン