「Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」Mr. Holmes
出演:イアン・マッケラン、真田広之
監督:ビル・コンドン
2015年
原作はミッチ・カリンの小説。原作を読まずに映画を見に行ったのだけど、それに先立って参照したのがこちらのレビュー。
第31回 真打ち美老人登場す――『ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件』(執筆者・♪akira) - 翻訳ミステリー大賞シンジケート
「美老人」という言葉、初めて知りました。おかげさまで、映画を見るまでの数日間、わくわくしながら過ごせました。
ホームズといえば19世紀の人というイメージが強いかもしれないけど、聖典「最後の挨拶」では第一次大戦前夜の英国に、60歳のホームズが出てくる。20世紀の人でもあるのだ。
さすがに最近は言わなくなったけど、何年か前までは、欧米のシャーロキアンが本気でホームズの誕生日を「祝○○歳」と祝っていたほど。「だって、死亡記事が新聞に載らないじゃないか」とか、「ローヤルゼリー効果で長生きだ!」とか何とか。
映画は93歳になったホームズが、終戦直後の日本を訪れ、サセックスに帰る場面で始まる。家政婦の息子が賢い少年で、ホームズもこの小さな助手を可愛がる。昔の事件を思い出しながら書いているのだが、明晰な頭脳を誇る名探偵にも老いは訪れ、なかなか当時のことを思い出せず、激しく苦悩する。
そもそも、終戦直後の混乱していた時期の日本まで行った動機が、山椒というのが驚き。ローヤルゼリーでは物足りないのだろうか? 兄のマイクロフトが少し前に亡くなったというエピソードが出てくる。マイクロフトがローヤルゼリーを摂っていたかは不明だが、ホームズ一族は長生きの家系らしい。
劇中劇として、架空のホームズ映画をホームズ自身が見に行くのだが、そのホームズ役は何とニコラス・ロウ! 「ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎」で少年探偵シャーロック・ホームズを演じた俳優なのだ。
ニコラス・ロウといえば。「ヤング・シャーロック」でワトソン役だったアラン・コックスと、新しいホームズ映画を撮るという企画があると、フランス・スイスの方で聞いたんだけど、それきり続報を聞かない。どうなったんだろう。
ホームズが日本にやってくるという設定のパスティーシュがあった。加納一郎の「ホック氏の異郷の冒険」で、大空白期間に、ホームズがサミュエル・ホック(イニシャルはSHのまま)という変名で、明治時代の日本に来るのだ。もちろん、完全アウェー状態でも、しっかり謎解きはします。「ご当地ホームズ」の中でも、傑作だと思う。ホント、英訳して海外のシャーロキアンに読んでほしい。
さて、映画版の記憶が薄れないうちに、比較用に原作の小説を読まなければ。
【追記】
思い出したので自分用にメモしておく。ウメザキ役の真田広之さんて、確かNHK「半七捕物帳」のドラマ版で半七親分役を演じていたよね。岡本綺堂の書いた「半七捕物帳」は、言うなれば、お江戸のシャーロック・ホームズ! 真田さんにとっては、ホームズとゆかりのある作品は2作目ということになるのかな。