横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

浦沢直樹展@世田谷文学館

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 NHK Eテレで放送中の「漫勉」シリーズが好きで、ときどき見ている。最初の頃、企画した本人である浦沢直樹さんの仕事現場、そして山下和美さんの仕事現場を取材していたが、ものすごく面白かった。漫画を描くテクニック的な部分もそうだし、文字通り白紙の状態から何かを生み出す過程に、目が釘付けになった。

 
 このシリーズを見るようになったきっかけは、一つには作品を読んだことのある漫画家さんの製作過程が見られること、もう一つは子供の頃、自分でも漫画を描いていたからだ。全然センスがなくて、「お絵かき大好きっ子」の域を出なかったので、とうに離れてしまったけれど。でもおかげで「ネーム」「(スクリーン)トーン貼り」とか中途半端に用語を知っている。

「漫勉」に加えて、今度はテレビ東京「クロスロード」で浦沢直樹展の準備のもようが紹介され、「これは見に行かなくては!」と思った次第。なにしろ、ここ何年かは面白い美術展をいくつか見逃していて、遠方の別会場まで見に行ければまだマシな方で、たいがいは「あ~、万難を排して行っときゃよかった!」と後悔することが多い。そんなわけで、会場のある芦花公園まで出かけてきた。



 一階には、漫画のキャラクターの等身大イラストが飾られ、撮影スポットになっている。会場は文学館の二階。最初は「BILLY BAT」の生原稿、そして珍しい、ネーム原稿が一緒に展示されていた。ストーリー進行と絵の構成を同時に考えるネーム作りは、「漫勉」に限らず、ほかの色々な漫画家さんが苦しんでいるのをあちこちで見たり読んだりしていたので、「これがあのネーム原稿か!」と感慨深かった。

「クロスロード」で紹介されていたが、大量の生原稿の壁は圧巻だった。代表作ごとに、ある1話分を集めて、壁1面に貼りつけてあるが、「この分量が連載1回分か~」と圧倒される。観客は皆、ついつい見入っていた。繊細で、大胆。

 いちばん驚いたのが、少年時代の漫画ノートの展示かな。子供なのに、コマ割を考えたりしっかりとした作品になっている。年齢を考慮すると、「すごいな~」と思うが、でも、あくまで自分の場合はだけど、子供の頃の絵って、人に見せるの恥ずかしくないか? 黒歴史じゃないか? 自分には真似できません。もし、実家から自分のお絵かきノートが出てきたら、焼却処分するよ! 浦沢さん、すごいや。

 浦沢氏が音楽を趣味としていることは「クロスロード」でも見たけど、ライブ活動だけでなく、CDまで出したりしてるなんて本格的! この人が音楽漫画を描いたらすごいよなと思っていたら、ジャズミュージシャンを主人公にした漫画もありましたね。展示はなく、売店で本を見たけど、熱量が絵から伝わってくる作品だった。

 世田谷文学館のHPによると、今月12日には、「浦沢直樹バンド」によるライブも開催されたとか! すげー! 浦沢直樹展は今月いっぱい開催中。