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横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

上海のシャーロック・ホームズ

「上海のシャーロック・ホームズ ホームズ万国博覧会 中国篇」
樽本照雄 編訳 国書刊行会

ホームズ物語が連載中だった時代に、中国人作家たちによって書かれたパロディがあった! 1904年~1907年(清朝末期)に中国の新聞・雑誌に連載された、ユーモアから本格ミステリまで、さまざまなパロディを集めた作品集。パロディシリーズ第1弾!

上海のシャーロック・ホームズ ホームズ万国博覧会 中国篇

上海のシャーロック・ホームズ ホームズ万国博覧会 中国篇

 

 
 国書刊行会様よりお送り頂きました。
 今、まとまった時間がとれないので、ちょっとずつ読んでいます。

「福爾摩斯【フウアルモス】最後の事件」は、色々な意味で衝撃的でした。

 福爾摩斯……「アンタ、誰?」と思ってしまった。ええ、そりゃ日本にも帆村荘六(ほむらそうろく)とか「しゃべくり探偵」の保住純一とかいましたけど……。パリの地名が出てきたり、西洋が舞台であるかのように書いているんですが、本当は中国が舞台だよね? とツッコミたくなりました。人名も明らかに中国人の名前だし。

 



 私は中国文学には詳しくないのですが、章の変わり目の「あとのことを知りたくば、次をご覧じろ」というフレーズが印象的でした。中国文学のきまり文句なんでしょうか。後で中国に留学していた友人に聞いてみようと思います。

 

 「深くて浅い事件」は人名・地名ともに英国風。作者がコナン・ドイルを意識しているのがよく伝わってきます。コリンペンという地名は……もしかして、「バスカヴィル家の犬」に出てくるグリンペンのもじりだろうか? 比喩の中にいきなり蘇東坡の名前が出てきたり、あるいは銀兌換券という表現が出てきて、ときどき「ここ、中国?」と引き戻されます。

 

 ショートショートは、当時の中国と英国の間のアヘン貿易を皮肉った内容。中国人に対して自虐的な気もするし、コカイン・モルヒネを使っていたホームズをからめて、一応はパロディになっているような気もする。


 あとがきと解説は、とても貴重な資料ですね。中国語はまったく読めないので、本当にありがたい。シリーズ第2弾はインドだそうです。

 国書刊行会からは、英語圏以外のホームズ・パロディ(パスティーシュ)として、既にイタリアとフランスの本が出ています。イタリア、フランス、中国(清朝)、インド……うん、世界一周できそう。

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 フランスと中国(清朝)のホームズ本。写真には入ってませんが、イタリアもあります。

 

 イタリアの方は、ワトソンの原稿が発見されたというていで、イタリアを舞台にした事件が収録されています。作者はイタリアのシャーロキアン。フランスの方は(記事はこちら)、ほぼ英国が舞台ですが、ドレフュス事件が話題になったり、詩人ネルヴァルの謎の死を扱っていたり、何気にフランスらしい内容です。個人的には、万国博覧会のイタリア篇、フランス篇にしても良いのでは? という気持ちです(あくまで気持ちの問題ね)。この2冊もお勧めです。


イタリア
エンリコ・ソリト「シャーロック・ホームズ七つの挑戦」

シャーロック・ホームズ七つの挑戦

シャーロック・ホームズ七つの挑戦

 

 

フランス
ルネ・レウヴァン「シャーロック・ホームズの気晴らし」

シャーロック・ホームズの気晴らし

シャーロック・ホームズの気晴らし

 

 

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