横文字の島

Ile de l'alphabet ~ ある翻訳者の備忘録

コードネームU.N.C.L.E.(アンクル)

「コードネームU.N.C.L.E.(アンクル)」The Man from U.N.C.L.E.
監督:ガイ・リッチー
出演:ヘンリー・カビル、アーミー・ハマー
2015年 アメリカ映画 

 
 少し前に見た「キングスマン」がちょっと物足りなかったので、本当にこの映画を楽しみにしていた。監督はガイ・リッチーで、ホームズとワトソンのバディものとして「シャーロック・ホームズ」を撮った人なので、期待もMAX。往年のテレビ・ドラマ「ナポレオン・ソロ」のリメイクだけど、そちらを見ていない人(私もその一人)でも十分に楽しめる。

 東西冷戦時代といっても、ファッションから判断すると1960年代が舞台。CIAのスパイ、ナポレオン・ソロ(ヘンリー・カビル)と、KGBのスパイ、イリヤ・クリヤキンアーミー・ハマー)が、ひょんなことからコンビを組む羽目になる。

 

 ああ、やっぱり映画には美男美女が出てこないとね。見てて目に楽しいもん。ソロとイリヤのキャラクターが対照的なところがツボで、反発を覚えたり、お互いの国のスパイ道具を自慢したりするところがおかしい。女性に対してイケイケなソロに対して、純情なイリヤが、とにかくかっ、かわいい!! 恋の行方も気になります。続編が作られたら、もちろん、その辺も描いてくれるよね?(と、監督に聞いてみる)

 キャストがはまっていて、とにかく嬉しい。英国人ウェーバリー中佐役はヒュー・グラントで、エンディングにちらっと映った経歴に「貴族の次男」という文字があり、私はドロシー・セイヤーズのピーター・ウィムジー卿を思い出してしまった。ウィムジー卿は第一次大戦で従軍した経験があり、貴族の次男坊。シリーズの最後の頃は第二次大戦の始まりが近く、軍人としてではなく民間人の立場で、外交上である役割を演じたり、はっきりと書いてはいないが、スパイに近いことをやっていたのじゃないかと思われる。

 見どころは、反発し合っていた2人の間に愛情……じゃなかった、友情が芽生えてくることだろうか。敵に捕まったソロが、助けに来たイリヤを見て「お前の顔を見て安心したよ」と言う場面。また、作戦のため、戦わずにいたイリヤが敵に奪われた父の腕時計を、ソロが取り返し、イリヤの手に戻す場面など。

 「キングズマン」での師弟愛も良かったんだけど、こーいう男の友情をしっかり描いているのがガイ・リッチ―作品の良いところ。本当、続編を作ってほしいな。

 映画でも小説でも、スパイものがいちばん面白かった時代って、やっぱり東西冷戦の頃だったんだな。「007」だって、初めの頃に比べたら、最近の敵ってスケールが小さく感じてしまう。「裏切りのサーカス」も映画が良かったからジョン・ル・カレの原作も読んでしまったほど。